よくある疾患「高血圧症」について①
- 13 時間前
- 読了時間: 5分
こんにちは!院長の遠藤です。よくある疾患について紹介するコーナーを記載してみようと思います。第1回目は「高血圧症」についてです。皆さんのお役に立てればと思います。
1. 高血圧は「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」
高血圧症の最大の特徴は、「自覚症状がほとんどない」ことです。 血圧が 150mmHg や 160mmHg と高くても、頭痛や肩こりを感じる人は少ない印象です。多くの方は、健康診断で指摘されて初めて「えっ、自分が高血圧なの?」と驚かれます。しかし、症状がないからといって放っておくのは危険です。 高い圧力がかかり続けることで、血管は数年~数十年のうちに少しずつダメージを受け、硬くなっていきます。これが「動脈硬化」です。そしてある日突然、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こします。心筋梗塞は命に関わりますし、脳梗塞は後遺症が残り思うように働けなくなるなどの影響があります。
2. そもそも、血圧とは何を測っているのか?
血圧とは、「心臓から送り出された血液が、血管の壁を押す力」のことです。 これを理解するために、水道のホースをイメージすると分かりやすいかと思います。
上の血圧(収縮期血圧): 心臓がギュッと縮んで、血液を勢いよく送り出した時の圧力。
下の血圧(拡張期血圧): 心臓が膨らんで、血液を溜めている時の(血管がリラックスしている時の)圧力。
診断と治療の目安
診察室で測る場合、一般的に 140/90mmHg 以上が高血圧と診断されます。 ただし、ご家庭で測る「家庭血圧」はリラックスした状態で測るため、少し厳しめの 135/85mmHg 以上が高血圧の目安となります。大きな病気を防いでいくための家庭での目標の数値は125/75mmHgと下げられています。2025年に日本高血圧学会が発表した「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、年齢や合併症に関わらず、診察室での血圧は130/80 mmHg未満を目標としています。家庭で測定する血圧は、より厳しめの125/75 mmHg未満を目指すことが勧められています。
*家庭での血圧は正常で、診察室での血圧が高くなってしまうケースもあり、それは白衣高血圧と呼ばれます。その場合は治療を必要としないことが多いです。
3. なぜ高血圧になるのか?
高血圧には、大きく分けて2つのタイプがあります。
本態性高血圧(約90%): 特定の原因病気があるわけではなく、遺伝的な体質に生活習慣が重なって起こるものです。
二次性高血圧(約10%): 腎臓の病気やホルモンの異常など、原因となる特定の病気があるタイプです。若い時から血圧が高い方や、3剤以上の血圧の薬を飲んでもなかなか下がらない時などは、これらを疑っていきます。血圧の相談を最初にいただいた時や、日々の血圧を診させてもらう中で、二次性高血圧の可能性も頭に置きながら診療していきます。
日々の生活で気をつけるべきは、1番の「本態性高血圧」です。 塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、喫煙、そしてストレスなどが複雑に絡み合って血圧を押し上げています。
4.薬を飲み始めたら一生やめられない?
「薬を飲み始めたら一生やめられないのですよね?」 診察室でよく受ける質問です。でもそんなことはありません。生活習慣の改善で血圧が下がり薬をやめる方針になる方もいます。夏場は血圧が下がりやすいため、季節によって血圧の薬を減量したり中断する方もいます。診察室で相談しながら進めていきます。
5. 治療の本当の目的は「数字を下げること」ではない
確かに、血圧を下げる薬(降圧薬)を飲み続ける方は多いです。しかし、治療の目的は「血圧計の数値を下げること」そのものではありません。 本当の目的は、「10年後、20年後、心筋梗塞や脳梗塞で倒れたり、心不全で苦しんだり、透析治療が必要になったりするのを防ぐこと」です。
高血圧が引き起こす怖い合併症
脳への影響: 脳出血、脳梗塞。寝たきりや認知症の原因になります。
心臓への影響: 心筋梗塞、狭心症、心不全。心臓がポンプ機能を失います。
腎臓への影響: 慢性腎臓病(CKD)。悪化すると人工透析が必要です。
血管への影響: 大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症(足の血管が詰まる)。
これらの病気は、一度起こってしまうと完全に元の体に戻るのが難しいものばかりです。高血圧の治療は、将来の自分への「最高の投資」だと言えます。
6. 今日からできる、血圧管理の3ステップ
「血圧が高い」と言われたら、まずは以下の3つのステップを意識してみましょう。
ステップ①:自分の「家庭血圧」を知る
病院で測ると緊張して高くなる方(白衣高血圧)もいれば、逆に病院では正常なのに家で高い方(仮面高血圧)もいます。 一番信頼できる数値は、リラックスしている自宅での数値です。 「朝、起きて1時間以内(排尿後、朝食前)」と「夜、寝る前」の2回、座って1〜2分安静にしてから測ると、状態がより分かりやすいです。(大変な場合は1日1回から)
ステップ②:減塩は「引き算」ではなく「置き換え」
日本人の高血圧の最大の敵は「塩分」です。 目標は1日6g未満ですが、急に薄味にするのは難しいものです。
お醤油を「かける」のではなく「小皿でつける」。
お酢、レモン、ハーブ、スパイスを活用して、塩分以外の刺激を楽しむ。 こうした小さな工夫の積み重ねが大切です。
ステップ③:お薬を正しく利用する
生活習慣の改善を数ヶ月頑張っても血圧が下がらない場合、お薬の力を借りるのが賢明です。 現代の血圧の薬は非常に進化しており、副作用も少なく、血管を守る力が強いものがたくさんあります。「一度飲んだらやめられない」ではなく、「お薬で血管を守りながら、生活習慣を整えていく」という前向きな捉え方をしてください。状態が良くなれば、減薬や休薬ができるケースも実際にあります。
結びに:
仕事の忙しさやストレス、ついつい後回しになってしまう運動など、生きている証が重なった結果です。単に血圧の数値を見るだけでなく、皆さまの背景にある生活スタイルや不安、大切にしている価値観をお聴きしながら、一緒に健康を作っていけたらと考えています。


